新聞などに出てくる「経済成長率」とは、実質GDPの成長率を意味しています。
実質GDPとは、名目GDPから物価変動分を控除した値になっており、「実質的な生産の増減」を指します。などと書いたところで、何が何だか分からないでしょうから、例を出して解説致します。
皆さんが1000円の野菜を買ったとき、日本の「名目」GDPの民間最終消費支出という項目が、そのまま1000円増えます。名目GDPとは、消費や投資などの需要を、売買が行われた際の「金額そのまま」で表現した国内総生産です。
ところが、名目的な金額ばかりでGDPを統計すると、困った問題が一つ発生します。すなわち、物価変動です。
先の例で言えば、物価上昇で野菜が1200円に値上がりしたとします。すると、名目GDPは別に消費された野菜が増えたわけでもないのに、20%成長してしまいます。実質的な生産や消費が増えたわけでもないのに、国民経済の規模(GDP)が勝手に20%拡大してしまうのです。無論、インフレ率が20%だったためですが、これは「実質的な国民経済計算」を考える上で困ります。
何しろ、物価がどれだけ上昇し、名目GDPが拡大したところで、実質的な生産が増えなければ雇用は改善しないのです。
というわけで、名目GDPから物価上昇分を控除し、「計算」で求めるGDPが実質GDPになります。実質GDPが成長していれば、実質的に生産やサービスの供給が増えているということを意味するわけです。実質GDPが成長していれば、その国の失業率は改善している「はず」です。(生産性の変化により変わってきてしまいますが)
ところで、実質的な生産の変化を意味しないからといって、名目GDPに価値がないかといえば、そんなことはありません。何しろ、わたくしたち日本国民は「名目的な金額」により給与所得の支払いを受け、税金を支払うのです。すなわち、実質的な生産が増えても、物価下落で名目GDPが縮小していくと、その国は、
「失業率は何とか下支えされているにも関わらず、各人の所得水準が下がっていく」
という状況に陥ります。まさしく、現代の日本国民が味わっている苦難が、上記です。
さらに、税収の源泉は「名目GDP」であって、実質GDPではありません。税金は「名目的な金額」で徴収されるためです。名目GDPが増えないと、税収が増えないということになり、その国の財政は次第に悪化していかざるを得ません。
バブル崩壊でデフレに陥った国は、名目GDPがマイナス成長になります。結果、政府の税収は減り、財政が悪化し、巷のマスコミや評論家たちが、
「このままでは政府は財政破綻する! 増税しろ! 公共事業を削れ! 社会保障支出を削減しろ!」
などと言い出し、実際に政府が緊縮財政に走ると、「名目GDP」の消費や投資が激減し、さらなるデフレ深刻化を引き起こすことになる、というのが日本人にお馴染みのデフレ-財政悪循環です。